1. SPMについて
  2. scalpingの必要性の検討
  3. Normal Data Base 共有の検討 〜コリメータの違い〜

SPMについて
  東京歯科大学市川総合病院 小野寺晋志

 SPM(Statistical Parametric Mapping)は、インターネットにおいて無償で入手可能な、脳血流SPECT解析ソフトである。Window95または98上で動作する。
 群と群(または1症例)を比較し、一方に対して、他方が有意に脳血流の低い(または高い)領域を、数学的手法を用いて探し出すソフトである。
それは次のような手順を踏んで行われる。
1. 正規化(Normalize):比較したい脳血流SPECT画像群を、それぞれ基準脳と呼ばれる物に合わせこんで、同じ大きさ同じ形にする。
2. 平滑化(Smoothing)
3. 統計解析(Statistics):voxelごとにt-検定を行い、有意差のでたvoxelを表示する。 解析結果は下図のように表される。
SPM解析結果の画像1
SPM解析結果の画像1

 SPMの利用目的としては、以下の二つがある。
・ 読影補助:正常群と各症例の比較
・ 研究目的:(例)正常群とアルツハイマー群の比較
 SPMのメリットは、数学的に客観的に脳血流SPECTを評価する点である。
視察によるSPECTの評価の問題点は、
1.関心領域の設定に観察者の主観が入りやすい。
2.関心領域から外された領域が無視されがちである。
の2点が挙げられる。SPMは客観的な評価であるため、この2点を解決できる。


scalpingの必要性の検討
  東京歯科大学市川総合病院 小野寺晋志

scalpingの画像
 scalpingとは、脳輪郭外countを削除することである。
SPMにて正確な統計処理を行うためには、scalpingが必要と言われている。
その必要性を検討した。

<使用機器等>
ガンマカメラ:SIEMENS社製E.CAM
薬 剤:99mTc-ECD
ソフト:SPM97 for Windows、DRL SPM Header Tool
使用template:ECD template(国立精神神経センター武蔵病院 松田博史先生作成)

同一条件で収集・再構成したNormal例33、臨床例22について検討した。

1.scalping+および−について、臨床例22例のNormalize後の画像を目視で比較した。
大きさが変わった例4/22
Countが変わった例2/22
大欠損部周辺に
違いが見られた例1/22
違いを認められず15/22

2.scalping+および−について、臨床例22例について同一条件でジャックナイフ検定を行い、有意差の出たvoxel数を比較。
同一患者のStatistics後の画像
結果scalping−の画像

結果scalping+の画像
control10 vs. 1   Height P<0.05   Extent P<0.01   P corrected
上:scalping− 下:scalping+

オリジナル画像
オリジナル画像

この例では、scalping−では低血流領域を検出できなかったが、scalpingすることにより、有意な低血流領域を検出できた。

臨床例22の、有意差のでたvoxel数の平均
scalping+scalping-
contrast1contrast2contrast1contrast2
平 均14703357156217642
標準偏差831311303742713907
contrast1:有意に血流の低いvoxel   contrast2:有意に血流の高いvoxel

contrast1、contrast2とも、scalping+と−の間に危険率5%で有意差があった。
すなわちジャックナイフ検定において、scalping+の方が有意な低血流領域を、有意に検出できた。

3.Scalping−について、PET Statistics normalizationのパラメータを変化させてジャックナイフ検定。
scalping+の結果に近づくか検討した。


Type of means、Value for grand maen は、変化させてもSPM結果に変化はなかった。
Threshold definiding voxels to analyze、Probability thresholdを変化させても、scalping+の結果に近づくということはなかった。



2および3の結果から、SPMにおいてscalpingは必要であると思われた。


4.scalping+および−について、Normal例33・臨床例22の、全脳平均値の比較を行った。

すべての例において、全脳平均はscalping+の方が大きかった。






Normal Data Base 共有の検討 〜コリメータの違い〜
  東京歯科大学市川総合病院 小野寺晋志

 コリメータが違った場合、SPMでどこまで正確な解析が出来るのか検討し、同一コリメータを持たなくても、NomalDataBaseを共有可能か検討した。

核医学検査装置SIMENS旭社製E.CAM
コリメータファンビーム、LEHR
放射性医薬品99mTc-ECD 800MBq(投与時)
脳ファントムIB−10(京都科学)
ソフトSPM97 for windows、OS:windows98、DRL SPM Header Tool
templateECD2テンプレート(国立精神神経センター武蔵病院、松田博史先生作成)


1.NomalDataBaseの構築
 ボランティアをつのり、脳血流SPECTを撮像した。このとき、FanBeamコリメータおよびLEHRコリメータで撮像した。すなわち、FanBeam、LEHR、2種類のNormalDataBaseを構築した。

2.SPMによる検討
 FanBaemで撮像した臨床例を2種類のNormalDataBaseを使ってSPM解析(ジャックナイフ検定)を行った。このときLEHRの画像にはさまざまな条件でChangの吸収補正をかけて検討を行った。
※SPMの前処理として、全症例・Normal群にscalping処理を行った。



21歳 F (ファンビーム)vs.20〜35歳 11例(ファンビーム)


21歳 F (ファンビーム)vs.20〜35歳 11例(LEHR 吸収補正なし)


21歳 F (ファンビーム)vs.20〜35歳 11例(LEHR Chan’s attenuation coefficient 0.02/cm)


21歳 F (ファンビーム)vs.20〜35歳 11例(LEHR Chan’s attenuation coefficient 0.04/cm)

Height p<0.05 Extent p<0.01 p uncorrected

視覚的には、Chan’s attenuation coefficient 0.02/cmのとき、ファンビームvsファンビームの結果に最も近づいた。


20症例ジャックナイフ検定での、有意差のでた合計voxel値のファンビーム(control群)vsファンビーム(症例)との相関
cotrol群症例
LEHR吸収補正なしvsファンビーム0.970381
LEHRchang’s 0.02 vsファンビーム0.971121
LEHRchang’s 0.04 vsファンビーム0.944261


10症例ジャックナイフ検定での、有意差のでた合計voxel値のLEHR(control群)vsLEHR(症例)との相関
cotrol群症例
ファンビーム vsLEHR吸収補正なし0.978202
ファンビーム vsLEHRchang’s 0.02 0.986779
ファンビーム vsLEHRchang’s 0.04 0.98282


Chan’s attenuation coefficient 0.02/cmのとき、最もよい相関を示した。


脳ファントムを用いた実験 外容器にTc-99mを入れてSPECT収集


ファンビーム  Bottom count / Peak count= 0.73


LEHR 吸収補正なし  Bottom count / Peak count= 0.65


LEHR Chang’s 0.02/cm  Bottom count / Peak count= 0.72

脳ファントムを用いた実験でも、Chan’s attenuation coefficient 0.02/cmのとき、最もファンビームに近づいた。


  • 目視ではchanの吸収補正 0.02/cmのときのSPM結果が、本来の組み合わせのSPM結果に近づいた。
  • 有意差のでた合計voxel値の相関でも、同様の結果だった。
  • 目視では、LEHR画像にchanの吸収補正 をかけることにより、読影補助を目的としたジャックナイフ検定に於いては、使用コリメータが異なっても、 NomalDataBaseの共有は可能と思われた。



技術情報に戻る  

メインに戻る  


(c)Copyright 2001,The Society of Nuclear Medicine Technology in CHIBA