平成12年度グループ研究
各機種間におけるI-123放出γ線に対するコリメータ性能比較
東京歯科大学市川総合病院 | 小野寺 晋志 | 日本医科大学千葉北総病院 | 中村 亜矢 |
船橋市立医療センター | 宮内 博史 | 千葉県救急医療センター | 小野 峰則 |
千葉大学医学部附属病院 | 飯森 隆志 | 帝京大学附属市原病院 | 渡部 晴之 |
千葉県循環器病センター | 柳沢 正道 | 船橋市立医療センター | 小野寺 敦 |
社会保険船橋中央病院 | 酒井 良介 |
Tc-99m点線源SPECTRUM LEHR 距離10cm シーメンス旭社製E.CAM
I-123点線源SPECTRUM LEHR 距離10cm シーメンス旭社製E.CAM
I-123点線源SPECTRUM コリメータなし 距離10cm シーメンス旭社製E.CAM
I-123からは、159keVおよび529keVのγ線が放出される。
Tc-99mでは、メインピークの高エネルギー側に散乱線は存在しないが、I-123では、529keVガンマ線由来の散乱線が存在する。
I-123ではLEHRコリメータを装着すると散乱線含有率が高くなる。これは、コリメータ隔壁での散乱線が増えるからではない。
斜入した159keVガンマ線は隔壁に遮蔽されやすいのに対して、529keVガンマ線は隔壁を透過しやすい。
つまり、159keVガンマ線は直角に近い角度のものしかシンチレータに入射しないが、斜入した529keVガンマ線由来の散乱線はシンチレータに入射しうる。
したがって、529keVガンマ線由来の散乱線がシンチレータに到達する確率が相対的に高くなるからである。
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139keV5% | 159keV20% | 179keV5% |
高エネルギー側散乱線は529keVガンマ線由来の散乱線である。コリメータ隔壁をpenetrate(貫通)する、すなわち斜入してもシンチレータに到達する割合が高いので、散乱線分布は低エネルギー側と比べ、広く分布する。
低エネルギー側散乱線には、上記529keVガンマ線由来の散乱線と159keVガンマ線由来の散乱線がが含まれる。159keVガンマ線由来の散乱線は、隔壁をpenetrateする確率が低いので、線源近傍に集中する。
そこで、各機種間における、123I放出γ線に対するcollimationの違いを知るため、6社7機種のガンマカメラを用い、コリメータの性能比較・検討を行った。
使用機種 6社7機種、全て2検出器
ADAC | ADAC Forte | LEHR・MEGP |
GE横河メディカルシステム | MAXXUS | LEHR・MEGP |
日立メディコ | RC-2600I | LEHR・LEGP・MHEGP |
島津メディカル | PRISM-2000 | LEHR・MEGP |
シーメンス旭 | E.CAM | LEHR・MEGP |
東芝メディカル | E.CAM | LEHR・LMEGP・MELP |
| GCA7200-A | LEHR・LEGP・MEGP |
検討1.
「JESRA ガンマカメラの性能測定法と表示法」に基づき総合空間分解能を測定し比較した。
すなわち、線線源を撮像し、FWHMを得た。
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散乱体なし | 散乱体有り |
散乱体なし
| 平均(mm) | 標準偏差(mm) |
LEHR | 7.99 | 0.82 |
MEorHME | 11.70 | 1.64 |
散乱体あり
| 平均(mm) | 標準偏差(mm) |
LEHR | 9.64 | 0.46 |
MEorHME | 12.97 | 1.70 |
中エネルギー用コリメータの方が、標準偏差が大きかった。すなわち機種間差が大きかった。
また、7機種中3機種の中エネルギー用コリメータを用いて収集した画像に干渉縞が見られた。
検討2.
159keVに±10%のmain window、139keVおよび179keVに±2.5%のsub windowを設定し、距離10cmの位置の点線源を撮像して散乱線含有率を算出し、比較した。また点線源の上下に
散乱体を置いて同様に行った。
| 平 均 | 標準偏差 | 標準偏差/平均 |
LEHR | 50.6 | 4.3 | 0.09 |
MEGP | 20.8 | 4.8 | 0.23 |
・ばらつきはMEGPの方が大きかった。すなわちMEGPで機種間差が大きかった。
・機種AのMEGP(中エネ用)より、機種BのLMEGP(低中エネ用)の方が散乱線含有率が低かった。
・機種C・LEHRでは、散乱線含有率が90%を越えた。
・機種AのMEGP(中エネ用)より、機種BのLMEGP(低中エネ用)の方が散乱線含有率が低かった。
Cを除くすべての機種のLEHRでは、低エネルギー側より、高エネルギー側の散乱線含有率が高かった。
高エネルギー側散乱線はすなわち、隔壁penetrate(貫通)型散乱線である。
LEGPおよびLMEGPでは、LEHRに比べ、高エネルギー側散乱線含有率が低く抑えられ、それにともない低エネルギー側散乱線も抑えられていることがわかる。これは、低エネルギー側散乱線にも隔壁penetrate(貫通)型散乱線(529keVガンマ線由来散乱線)が含まれるからである。
だが、同じLEGPでも約10%の機種間差があった。
放出割合83.3%の159keVガンマ線が散乱体により散乱されて、低エネルギー側散乱線含有率が増えている。
散乱体なしでも低エネルギー側含有率の高かった機種C・LEHRは散乱線含有率が90%を越えた。
高エネルギー側散乱線を遮蔽することにより、散乱線含有率は低く抑えられている。
前述のようにMEGPではLEHRより機種間差が大きい。
機種AのMEGP(中エネ用)より、機種BのLMEGP(低中エネ用)の方が高エネルギー側散乱線遮蔽能力が高いことがわかる。
メーカーによって「中エネ」の認識が異なっているという印象を受けた。
(現在販売されている機種Aの中エネルギー用コリメータはこの実験のMEGPより遮蔽能力が高い。)
検討3.
「JESRA ガンマカメラの性能測定法と表示法」に基づき総合感度を測定し比較した。
159keVに±10%のmain window、139keVおよび179keVに±2.5%のsub windowを設定し、main windowのcountからsub windowのcoutを引いた値からも感度を算出した。それを
「真の感度」と呼ぶこととした。
1より大きいと、LEHRより感度がよいということになる。
LEGPは2機種ともLEHRより感度がよかった。
LMEGP・MEGPは5機種でLEHRより感度が低かった。
散乱線成分を除いたcountより計算した真の相対感度は、すべての機種で相対感度より大きくなった。
真の相対感度はほとんどの機種で約1または1以上になった。
すなわち、散乱線成分を除いた感度は、ほとんどの機種で、LEHRとMEGPは同等またはMEGPの方がよいという結果だった。
これは、一見LEHRの方が感度がよいように思えるが、それは散乱線を多くcountしているからだということを示している。
検討4.心筋ファントム・H/M比
・心臓肝臓ファントム(肺・縦隔・心筋部分にI-123水溶液)を撮像し、TEW・IDW・補正なしのときのH/M比を算出した。
(IDWとはI-123 Dual Window法のことで、高エネルギー側だけにsub windowを設定する散乱補正法である)
・使用機種: 東芝メディカル GCA7200-A
H/M比 右の数字はそれぞれ、LEHRを1とした値
| 補正なし | IDW | TEW |
LEHR | 2.54 | 1.00 | 3.71 | 1.00 | 4.30 | 1.00 |
LEGP | 3.02 | 1.19 | 3.59 | 0.97 | 4.15 | 0.97 |
MEGP | 3.17 | 1.25 | 3.34 | 0.90 | 3.94 | 0.92 |
散乱補正を行うことにより心縦隔比は上昇した。この傾向はLEHRで強かった。
散乱線補正を行わないとコリメータ間誤差が大きかったが、補正を行うことにより誤差が減少した。
まとめ
- 分解能はMEGPで機種間差が大きかった。
- 3機種のMEGPで画像に干渉縞が見られた。
- 散乱線含有率でもMEGPで機種間差が大きかった。
- 画像の構成に寄与するγ線に対する感度は、MEGPとLEHRは同等またはMEGPの方が高い傾向だった。
- 散乱補正を行うことにより心縦隔比は上昇した。この傾向はLEHRで強かった。散乱線補正を行わないとコリメータ間誤差が大きかったが、補正を行うことにより誤差が減少した。
多くのメーカーで、LEHRは99mTcを念頭において設計されていると思われる。 123Iでは高エネルギー側の散乱線含有率が高かった。
MEGPでは機種間差が大きかった。これは、より高エネルギーをカバーすることを考えているものとそうでないものの設計思想の違いと思われた。
干渉縞が出たような、より高エネルギーのγ線を念頭に置いた設計のものは別として、分解能さえreasonableであれば、123Iイメージングには、MEGPの使用が望ましいと予想できる機種もあった。
今回実験する機会に恵まれた機種BのLMEGPおよび機種C・GのLEGPは123Iイメージングに適していると思われた。
123I-MIBG心縦隔比の変化は、適切な散乱補正を行うことにより軽減できるものと思われた。
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