千葉核医学技術研究会
技術情報・基礎編・学生向け
核医学検査で使用される放射性核種

核医学検査で使用される主な放射性核種
核 種半減期主ガンマ線エネルギー(keV)と放出割合(%)崩壊形式生 成
81mKr13秒190(67.0%)ITジェネレータ
99mTc6時間141(89.1%)ITジェネレータ
123I13時間159(83.3%)ECサイクロトロン
111In67時間171(90.0%)、245(94.0%)ECサイクロトロン
201Tl73時間135(2.6%) 、167(10.0%)、 71〜80(201Hg-X線)ECサイクロトロン
67Ga78時間93.3(39.2%)、185(21.2%)、300(16.8%)ECサイクロトロン
133Xe5.2日81(38.0%)β-原子炉
131I8日364(81.7%)β-原子炉(核分裂)
51Cr27.7日320(10.1%)EC原子炉
59Fe44.5日1099(56.5%)、1292(43.2%)β-原子炉

親 核 種
核 種半減期主ガンマ線エネルギー(keV)と放出割合(%)崩壊形式生 成
81Rb4.6時間190(64.0%)、446(23.2%)、
511
EC
β+
サイクロトロン
99Mo66時間739(12.1%)β-原子炉

IT:核異性体転移  EC:軌道電子捕獲

 機械的に半減期やエネルギーを覚えるのは大変だし、忘れやすい。記憶は印象づけが大事である。例えば、
 「81mKrは肺換気シンチで使われるが、半減期が13秒と短いので呼気(患者さんがはいた空気)をそのまま大気中に放出できる。」とかね。

   核医学で使用される放射性核種を半減期の短い順に並べてみた。
 核異性体転移でγ線を放出する核種は、半減期が短いことがわかる。
 α崩壊、β崩壊、ECなどに伴いγ線が出るが、ほとんどの核種では崩壊やECとほぼ同時にγ線を放出する。だが中には少しの時間をおいてからγ線を放出する核種もある。その現象が核異性体転移である。だから核異性体転移の場合は半減期が短い、と考えると覚えやすいかも。つまり、崩壊の後、ガンマ線出さずに我慢してるんだけど、その我慢はそう長くは続かないので半減期が短いと考えると覚えやすいかも。

   核医学検査で最もよく使用される放射性核種は99mTcである。その理由は、
  ・ 半減期が短い → 被爆が少ないので大量投与ができる。 → 画像がきれい
  ・ ガンマ線エネルギーが手頃(人体にあまり吸収されず、薄い鉛で遮蔽できる)。
    また、141keVより高いエネルギーピークを持たない。(例えば123Iは159keV以外に529keVを持つ。)
      → 被曝が少ないし、コリメーション(コリメータ隔壁で斜入ガンマ線を遮蔽すること)しやすいので画像がきれい

 99mTcの次に検査によく使われる(薬の種類の多い)放射性核種は123Iである(脳血流、甲状腺、心筋など)。
 半減期も99mTcの次に短い。ガンマ線エネルギーも159keVとこれまた手頃である。だが、529keVという高いエネルギーのガンマ線も放出する(1.4%)。このガンマ線由来の散乱線が画質に悪影響を及ぼす。  技術情報・各機種間におけるI-123放出γ線に対するコリメータ性能比較 を参照されたし。
 
 201Tlは心筋シンチや腫瘍シンチ(脳腫瘍、甲状腺腫瘍、肺腫瘍、骨・軟部腫瘍、および縦隔腫瘍)、副甲状腺シンチに使われる。軌道電子捕獲の後は、軌道に電子の空席ができるので、特性X線が出るわけだが、201Tlの場合は主にこの特性X線を収集して画像を得る。

 67Gaは腫瘍・炎症シンチに使われる。投与2〜3日後に中エネルギー用コリメータを用いて撮像するのが一般的だが、最近では、LEGP(低エネルギー用汎用)コリメータを用いて撮像し、TEW法により散乱補正をする方法を行っている施設もある。LEGPでは185および300keVの斜入ガンマ線を十分コリメーションできず、画像に散乱線成分が増える。それをTEW法により取り除くわけである。

 また、核医学検査ではITやECのものが好んで用いられる。なぜならITやECではα線やβ線が放出されないので被曝がより少なくてすむからだ。
 α線はヘリウム原子核、β線は電子という粒子である。粒子が人体細胞にあたれば影響は大きい。つまり被曝が大きい。


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