千葉核医学技術研究会
技術情報・基礎編・学生向け
脳の循環予備能・代謝予備能

循環・代謝の変化
脳の灌流圧低下による循環・代謝の変化
 「核医学ハンドブック 監修:鳥塚莞爾 編著:小西淳二 金芳堂」より引用

 例えば、心不全で心臓のポンプ機能がおちることなどによって灌流圧が低下すると、正常の脳では脳血流を一定に保とうとする自動調節機構が働く。  脳の血管径がひろがり、より多くの血液を呼び込もうとするのである(と考えられている)。これを循環予備能という(上図A-B間)。これにより血流量は一定に保たれる。したがって酸素消費量も一定に保たれる。
 さらに灌流圧が低下して、脳の血管径を目一杯ひろげても血流量が足りなくなると、今度は脳細胞自体の酸素摂取率が上がる。少ない血液からできるだけ多くの酸素を摂取しようとするのである。これを代謝予備能という(上図B-C間)。これにより酸素消費量は一定に保たれる。
 さらに灌流圧が低下して、循環予備能・代謝予備能を目一杯働かせても、おいつかなくなると、ついには、生きていくだけの酸素を脳細胞がもらえず、不可逆的変化、すなわち脳梗塞となる。
 内頚動脈の狭窄などの脳血管障害でも同様のことが起こる。


下の画像は左内頸動脈に狭窄(血管が細くなっていること)がある患者さんの脳血流SPECT画像である。
脳血流SPECT画像
脳血流SPECT画像 上:control 下:acetazolamide(DiamoxTM)負荷後

 controlでは、左頭頂後頭部に若干の血流低下が認められるが、それ以外は左右差はほとんどない。
 acetazolamide(DiamoxTM)とは脳血管径をひろげ、循環予備能を働かせる薬品である。
 acetazolamide(DiamoxTM)投与後の脳血流SPECT画像では、後頭葉および右半球で血流がcontrolより上昇しているが、後頭葉を除く左半球では変化が見られない。後頭葉・右半球ではacetazolamide(DiamoxTM)により循環予備能が働いた(脳の血管径が広がった)と思われる。左半球は、左内頚動脈の狭窄により、controlの時点ですでに循環予備能が働いていた(血管径がひろがっていた)と思われる。だからacetazolamide(DiamoxTM)を投与しても変化がなかったのだと思われる。


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